インドネシア共和国スマトラ島西部パダン沖地震被災者支援事業概要

 2009年9月30日午後5時16分にインドネシア共和国のスマトラ島西部パダン沖で発生したマグニチュード7.6の地震により、約1,100人が亡くなり、約12万棟の住宅が甚大な被害を受けた。インドネシア政府が2009年12月5日に発表した政府再建復興プランによると、この地震により被害を受けた西スマトラ州の中でも、特に震源に近いパダンパリアマン県の被害は大きく、甚大な被害を受けた住宅のうち、約60%が、パダンパリアマン県に集中している。

 住宅再建のため、国家災害管理局(BNPB)は、県、郡、地区、市などの政府機関と協力し、住宅再建のための資金助成や施工管理などを計画している。BNPBによる住宅再建プログラムの中で、西スマトラ州政府は、国際協力機構(JICA)などと協力して、建築行政を通じて、住宅の品質管理を行なうため、より安全な住宅に対する基本的要求事項(キーリクワイアメント)を作成し、また、助成金を拠出する際の建築確認申請のシステムを構築した。

 キーリクワイアメントに従って、地震に対して、より安全な住宅が再建されるためには、住宅建設現場で直接施工に携わる建築職人がキーリクワイアメントを理解し、この技術を実施できなければならないと考えられる。

 そこで、SNS国際防災支援センターは、ジャパン・プラットホーム(以下、JPF)からの助成金を得て、2010年1月30日〜4月15日までの76日間、インドネシア共和国ジャワ島中部のジョグジャカルタ州で昨年、復興された住宅の調査、地震に対してより安全な住宅を建設するための技術普及、および耐震補強技術の確立とその普及を、以前から協力しているガジャマダ大学と共同で、巡回建築指導事業を行なうこととなった。この事業の目的は、BNPBによる住宅再建プログラムが開始される前に、建築職人にキーリクワイアメントを理解させ、また、キーリクワイアメントを建設現場で確実に実施するための工程を建築職人とともに考え、それらを普及させることにある。

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パダンパリアマン県における巡回建築指導事業(前半:2010年1月30日〜2月28日)報告

  西スマトラ州政府や地元政府からの要望と住宅再建支援を行なっている他の国際機関との調整により、ナムリンコン郡パカンダンガン村で建築職人に対するトレーニングを実施することにした。この事業では、パカンダンガン村内の5つのコミュニティ毎に約20名の建築職人を集めて、トレーニングを行ない、最後に、トレーニングに参加した約100名の建築職人を集め、キーリクワイアメントを現場で実施するための工夫などについての意見交換や情報共有を行なう。また、トレーニングを通じて職人から出たキーリクワイアメントを現場で実施するための工夫などをまとめて、テキストを作成し、トレーニングに参加した建築職人を中心に配布する。

 はじめに、住宅を再建、もしくは修理している現場を回り、それらの現場で働いている建築職人に対してインタビューを行ない、キーリクワイアメントの理解度を確認し、さらに彼らの弱点や癖なども調査する。それらのインタビューの結果を分析し、トレーニングの内容を決定した。2月28日までに、51名の建築職人にインタビューを行なった。最終的に100名の建築職人に対して、インタビューを行なう予定である。

 そして、2月24日と25日の2日間、パカンダンガン村のリンガンリンガンにおいて、20名の建築職人を集め、トレーニングを行なった。1日目は、講義で、地震のメカニズム、地震による建物の挙動、および地震による住宅被害について説明した後、キーリクワイアメントを、インタビューによって判明した参加者に共通する弱点や癖などを強調しながら、説明した。その後、前もって作成した梁のサンプルを用いて、梁同士の結合の実技を行なった。実技の後、キーリクワイアメントに従った梁同士の結合を現場で実施するための方法などについて話し合った。2日目は、住民が自己資金で住宅再建を行なっている現場で、梁同士の結合、コンクリート注入のための型枠設置、コンクリート作成、コンクリート注入を行なった。そして、建設現場での実技の後、キーリクワイアメントに従った施工についての意見交換をした。

 トレーニングに参加したほとんどの建築職人がキーリクワイアメントを建設現場で実施するためのアイデアを積極的に出し、参加した職人同士が活発に意見交換も行なっていた。その結果、トレーニング前のインタビューとトレーニング中の話し合いを通じて、参加した建築職人からキーリクワイアメントを効率よく、そして確実に建設現場で実施するための様々なアイデアを得ることができた。また、トレーニング後に実施したアンケートの結果によると、ほとんどの参加者のキーリクワイアメントに対する理解度が上がっていることが判明した。

 今後、その他の4つのコミュニティで、それぞれ約20名の建築職人を集めて、トレーニングを行なう。そして、それらを通じて出たアイデアを基に、キーリクワイアメントを建設現場で実施するための工夫などをまとめてテキストを作成する。このテキストは、すべてのトレーニング終了後に行なう建築職人同士の意見交換と、その後の住民と政府の代表者などを集めて行なうセミナーの際に、配布する予定である。この事業を通じて、キーリクワイアメントを理解し、さらにその技術を建設現場で実施できる建築職人の数が増え、キーリクワイアメントに従って、地震に対してより安全な住宅が再建される環境が整うことが大いに期待される。

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パダンパリアマン県における巡回建築指導事業(前半:2010年3月1日〜4月15日)報告

 SNS国際防災支援センターは、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(以下、JPF)から助成金を得て、2009年9月に発生したスマトラ島西部パダン沖地震の被災地である西スマトラ州パダンパリアマン県ナムリンコン郡パカンダンガン村において、住宅再建支援のため、地元建築職人を対象に地震に対してより安全な住宅を再建するための技術トレーニングを行なった。事業期間は、2010年1月30日〜4月15日の76日間であった。以下に、事業後半(2010年3月1日〜4月15日)の内容を紹介する。

元建築職人のためのトレーニング開催
 本事業では、パカンダンガン村にある5つのコミュニティで、それぞれ約20名の建築職人を対象として、国際協力機構(JICA)が中心となって作成し、西スマトラ州政府の公認を得た住宅再建のための基本的要求事項(キーリクワイアメント)に従って、地震に対してより安全な住宅を再建するための技術指導を行なった。

 事業後半では、前半でトレーニングを実施したリンガンリンガン以外の4つのコミュニティ(サランガガ、パサパカンダンガン、カンポンパナス、タンジョンアオル)において、それぞれ約20名の建築職人を集めて、トレーニングを実施した。

 そして、各コミュニティでのトレーニングの後、セミナーを開催した。このセミナーには、ナムリンコン郡の政府や住民の代表者とともに、トレーニングに参加したすべての建築職人約100名が集い、トレーニングを通じて学んだことをお互いに共有した。また、国家災害管理局(BNPB)と協力し、トレーニングに参加したすべての職人に参加証を渡した。

 トレーニングを通じて、参加した建築職人同士でキーリクワイアメントを建設現場で実施するための様々なアイデアが話し合われた。それらの話し合いによって、多くのアイデアが生み出された。また、トレーニング後のアンケート結果などによると、経験豊富な職人と若い職人両方が参加したため、若い職人は、トレーニングに参加したことにより、経験豊富な職人から多くの技術を吸収でき、その結果、同地域の職人全体の技術のレベルアップに貢献できたと思われる。

元建築職人のためのトレーニング開催
 トレーニング前に行なった建築職人へのインタビューの結果とトレーニング内の話し合いによって生み出されたアイデアをまとめ、建築職人がキーリクワイアメントを建設現場で実施するためのマニュアルを作成した。このマニュアルは、合計3,000部印刷し、地元建築職人を中心に配布された。建築職人に、このマニュアルを配布したことによって、彼らがキーリクワイアメントに従って住宅を再建する際、マニュアルを参考に自らの力で地震に対してより安全な住宅を再建できることが期待できる。

 開始が遅れている政府による住宅再建プログラムは、2010年6月頃から実施されると思われる。そこで、SNS国際防災支援センターは、今回の事業の経験を活かし、6月下旬頃から、JPFの助成金を得て、住宅再建支援するため住民を対象とした事業を計画している。

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