インドネシア事業

 2006年5月27日にインドネシア共和国のジャワ島中部で発生したマグニチュード5.9の地震により、沿岸部を中心に、約13万の家屋が倒壊し、約44万の家屋が半壊や損壊などの被害を受けた。死者数は、約5,700人、負傷者は、約38,500人を数える大惨事となった。

 特に被害の大きかったジョグジャカルタ州は、5つの県で構成されており、その中でもBantul県の死者が最も多く、州内の死者の約88%にあたる。死者の主な原因は、脆弱な住宅が倒壊し、その下敷きになったことによるものである。特に、地震の発生時刻が早朝で在宅率が高かったことも影響している。インドネシアの建築物設計基準は、1974年に施行され、1991年、2001年に改訂されている。この基準は、主に、ニュージーランドの基準を参考に策定されたものである。しかし、被災地では基準にしたがって建設された建物は少なく、個人で建設したNon-engineered buildingが多く被害を受けている。

被害地域

 ジャワ島地震により、ジョグジャカルタ州で被害を受けた住宅は、約37万棟であった。その後、政府資金と国際・国内NGOによって、住宅の再建支援が行なわれ、多くの被災者が新しい住宅を手に入れることができた。その再建支援の際、地元政府は、ガジャマダ大学、国際協力機構(JICA)などと協力して、建築行政を通じて、住宅の品質管理を行なうため、キー・リクワイアメント(より安全な住宅に対する基本的要求事項)や建築確認申請を強化した。

 しかし、この政策は、現場レベルに十分普及されておらず、結局、今までのやり方で再建されている状況が多く見られた。さらに、住宅再建支援金で再建された住宅は、手狭であったため、その後、被災者は、資金に余裕ができると、住宅の増築を行なった。その際も、住宅再建のときと同様、今までのやり方で増築されたケースがほとんどであると考えられる。

 そこで、SNS国際防災支援センターは、ジャパン・プラットホーム(以下、JPF)からの助成金を得て、2009年2月9日〜4月9日までの60日間、ガジャマダ大学と共同で、巡回建築指導事業を行なうこととなった。この事業の第一の主な目的は、住宅を再建している、または耐震補強を必要としている被災者に、地震に対して安全な建物を建てるために重要な基本的な耐震工法のポイントを示し、各被災者が基本的な施工管理ができるようになり、手抜き等の不良建築物を減らすことである。また、第二の主な目的は、再建された住宅で、施工不良により耐震基準に達していない建物に対して耐震指導と耐震補強を行ない、耐震基準を満たした地震に対して安全な建物に補強するための支援をすることである。

■ページのトップに戻る
ジョグジャカルタ州における巡回建築指導事業第1期前期報告

 ガジャマダ大学からの提案や被災地からのリクエストにより、Jetis地区Trimulyo分地区を集中的に支援することにした。はじめに、再建された住宅の状況や耐震補強が必要だと思われる住宅などを確認するため、Trimulyo分地区の12の村で住宅の現状調査を行なった。調査表を作成し、調査の際、各スタッフが評価をして各項目を記入した。それらの項目は、キー・リクワイアメントに従って作成された。事業開始後3週間(〜3月3日)で、170軒の住宅を調査した。

  調査の結果、多くの再建された住宅で、キー・リクワイアメント(より安全な住宅に対する基本的要求事項)に従っていない基本的な問題が数多く認められた。

 そこで、3月5日にTrimulyo分地区の分地区公会堂でワークショップを開催し、@ 170軒の住宅の調査結果の統計的な説明、A 数多く認められた問題点の提示、B キー・リクワイアメントに基づいた耐震技術に関する説明、C イランでの震災後復興と防災の経験、及びD 耐震補強に関する説明を行なった。このワークショップには、分地区長、12の村の代表者、各村に住む建設職人など、50名が参加した。

 ほとんどすべての参加者が最初から最後まで、講義に非常に熱心に耳を傾け、数多くの質問が出た。ワークショップの途中、参加者の多くから、耐震補強の方法について、より具体的にもっと知りたいとの強い要望が出た。そして、その場で、3月25日にTrimulyo分地区で各村の代表が出席してのワークショップを開催し、その後、12の村で、それぞれ耐震補強の実技を中心としたワークショップを開催することを決定した。ワークショップ終了後、多くの参加者から、「地震に対して安全な家を建てるための基本的な技術を再認識できてよかった」、「イランの経験を知れて、おもしろかった。」、「耐震補強法について具体的な方法をもっと知りたい」などの感想を聞くことができ、非常に大きな反響を感じることができた。

 さらに、このワークショップを企画しているとき、各村の代表者から、各村で建設職人を対象に実践的なワークショップを開催してほしいとの強い要望があったため、3月17日〜19日までの3日間、12の村でそれぞれ、住宅建設と増築のための建築の基本に関するワークショップを開催することになった。これらの各村でのワークショップでは、再建された住宅の現状調査の結果を基に、問題が多かった箇所についての基本を、実践トレーニングを中心に指導する予定である。

■ページのトップに戻る


事業内容
 SNS国際防災支援センターは、現在、ジャパン・プラットフォームからの助成金を得て、ジャワ島地震で被害を受けた地域で、地震に対して安全な住宅を建設するための基本技術と、既存の住宅を耐震化するための技術の普及活動を実施している。以下に、2009年4月9日までに実施した活動内容を紹介する。


1・地震に対して安全な住宅を建てるための建築の基本を指導
 震災後に再建された住宅の現状を調査し、必要に応じて建築に関する指導を行うため、ガジャマダ大学と協力して、被災地のほぼ真ん中に位置するJetis地区Trimulyo分地区の12箇所の村に建つ4,277軒のうち、無作為に選んだ300軒の復興住宅を巡回した。

巡 回 軒 数 住 宅 数

Bembem

25

320

BlawongT

25

380

BlawongU

23

410

Bulu

26

416

Cembing

24

310

Denokan

22

250

Karangsemut

23

205

Kembang Songo

24

585

PonggokT

25

340

PonggokU

30

475

Puton

23

360

Sindet

30

226

 

300

4,277

 巡回した300軒の住宅の状況を分析したところ、図面上あるはずの柱や梁がないことや、壁の大きさが規格以上であることなどの問題点が多数認められた。また、被災地周辺では、家を建てる際、はじめに、予算に応じた家を建て、資金や家族が増えたときに随時、増築していく。そのため、政府や国際機関などからの支援で住宅を再建した後に、住民によって増築された箇所が多く認められた。しかし、増築された多くの箇所は、キー・リクワイアメント(より安全な住宅に対する基本的要求事項)に従っておらず、多くの問題が認められた。

 そこで、分地区で各村の代表者などを対象にしたワークショップを開催し、復興住宅の現状を報告し、キー・リクワイアメントに従った建築の基本を紹介した。その後、各村の建築職人を対象に、12のそれぞれの村でワークショップを開催し、実技指導を中心に建築の基本を指導した。12の村のワークショップに、合計216名の建築職人が参加し、建築の基本を学んだ。その中で、建築の基本をわかりやすく解説した資料を配布し、ワークショップの後、参加者がいつでもその基本を確認できるようにした。


2.耐震補強技術を提案
 300軒の復興住宅を巡回しているときに住民から、またワークショップの参加者から、すでに建っている復興住宅や増築箇所を耐震化するための技術を普及してほしいとの強い要望があった。また、300軒の巡回建築指導の結果をガジャマダ大学と分析している際も、耐震補強技術普及の必要性を話し合っていたため、この技術を普及することにした。

 そこで、まず、分地区でワークショップを開催し、各村の代表者などに耐震補強技術を提案した後、12のそれぞれの村でワークショップを開催し、建築職人を対象に、実技指導を中心に我々が提案する耐震補強技術を指導した。12の村のワークショップ合計で、225名の建築職人が参加し、この技術を学んだ。

 この地域では、今まで、住宅の耐震補強は行われたことがなく、この耐震補強技術は、建築職人や村の住民にもはじめての技術であった。そのため、本格的に普及する前に、耐震補強にかかるコストや工事のしやすさなどを考慮して、改善する必要があると考えた。

 そこで、村の住民からの耐震補強への強い要望なども考慮し、各村に耐震補強のための資材を提供し、各村で10〜20軒程度の復興住宅を、今回指導した技術を用いて、試験的に耐震補強してもらうことにした。

 その後、可能であれば、耐震補強が行われた住宅を巡回し、各村で実施された耐震補強工事の結果を調査し、コストや建築職人の意見などを分析する。その後、専門家の意見も交え、この地域に合った耐震補強技術を確立し、それを普及させたいと考えている。

■ページのトップに戻る


トップページSNSとはSNSの活動事業地だより防災の知恵リンクお問い合わせ
English Site